『越境する音楽心理学』 河瀬 諭先生(名古屋工業大学・ヤマハ音楽研究所)

 

音楽におけるコミュニケーションは複雑な過程を経る。講演者は特に、演奏者間、および演奏者と観客間のコミュニケーションについて検討してきた。本講演では、筆者のこれまでの研究結果を紹介するとともに、多方面の研究者の方々との出会いや、それによって得たインスピレーションや新しい見方についても述べる。さらには、本研究の、将来的な深化・発展の過程について、どんな分野との連携が重要になってくるかという予想も交えて考察する。これらをとおして、音楽におけるコミュニケーションのメカニズムについて議論するとともに、心理学が異分野とどのように相互促進的に連携していけるのかについて考えたい。

 

『視野を広げる時、こだわる時』 鈴木 華子先生(立命館大学)

 

「専門はカウンセリング心理学です」というと、「臨床心理学ね!」とよく言われるのですが、実はカウンセリング心理学と臨床心理学は、発展してきた経緯や視点が少し異なります。そんなカウンセリング心理学と、私とカウンセリング心理学の関係について少しお話をしてから、社会の中のマイノリティのメンタルヘルスやウェルビーイングを扱う多文化間カウンセリングのお話をします。また、堅い学問から少しはずれて、異分野や異文化との共同研究から学んだこと(アメリカ、カナダ、フランスと共同研究中)、若手のキャリア形成(キャリアカウンセリングはカウンセリング心理学の得意分野)、若手や女性がリーダーシップを取ること等についても、自身の経験とカウンセリング心理学の知見を交えながらフロアの皆様と一緒に考えていこうと思っています。

 

『根拠に基づく臨床心理実践の進め方』 古川 洋和先生(鳴門教育大学大学院)

 

ランダム化比較試験ならびにその成果に基づくメタ分析によって、さまざまな心理的問題に対してどのような臨床心理学的支援が有効であるかが示されるようになった。その結果、根拠に基づく臨床心理実践の発想が重要性を増しているものの、わが国においてはその発想が十分に浸透していない。そこで本会では、根拠に基づく臨床実践の進め方について紹介ならびに演習を行い、「結果にコミットする」臨床心理学的支援について考える。